日本の次の主力ロケット「H3ロケット」の開発が少し難航しているようです。
今回「H3ロケット開発状況に関する記者説明会」がyoutubeで実施されたので、どんな状況なのか聞いてみて、皆さんにも簡単に説明してみようと思います。
具体的には、H3ロケット第1段エンジン(LE-9エンジン)の試験で問題が発見されて、問題への対処中とのこと。合わせて打ち上げの延期も発表されました。
ロケット第1段エンジンは最初にロケットを持ち上げるエンジンで、皆さんが打ち上げをイメージするときに炎を噴いているエンジンです。
ここは万全でないとマズいのはなんとなく分かります。
では、説明を聞いてみます。
動画と説明資料はこちら。
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2020/5にH3ロケット第1段エンジン(LE-9)の開発中に実施した試験で、二つの問題が発生しました。
そのため、スケジュールを延期して1号機は2022/3月に打ち上げるスケジュールに変更しました。(但し、これも遅らせることがこの後説明されます。)
問題とは、
①燃焼室内壁の開口(燃焼室の壁に穴が開いた)
②液体水素ターボポンプ(FTP)タービンの疲労(長時間使うと割れた)
の二つです。
それ以降、様々な検証をして、改良したエンジンの設計を試験を交えて実施中だそうです。
しれっと「設計確定に向け試験」と書いてあるということは設計はまだ決まっていないみたい。
設計が確定して試験するとなるとまだ結構かかりそうに思えます……。
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問題①燃焼室内壁の開口問題の説明です。
冷却するために設けられた溝が高熱で変形して、周りを押し広げることで穴が開いてしまったようです。
高温が問題なので、冷却を強化し、熱くなりすぎないような動作パターンにすることで対応するそう。
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細かな説明です。
試験データを元にシミュレーションで実際にこの問題が起こることが再現できたそうです。
繰り返し高温になることで変形が進んで穴が開いてしまうとのこと。
壁面が約830℃以下になるようことで対応は確立できたそうで、1号機は問題無し。
ただ、2号機以降は作り方を変えるそうで、材料を削って作る方法から3Dプリンタに変わります。
こうなるとまた色々と特性が変わってしまうので、3Dプリンタ製の方も別に評価試験が予定されています。
そのまま行けば……とも思いますが、3Dプリンタ製は恐らくめっちゃ安くなるはず。早めに試験して採用が出来るといいな。
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問題②FTP(液体水素ターボポンプ)タービンの疲労問題についての説明です。
共振という「複数の部品で揺れやすさが似ていると振動が増幅される現象(超ざっくり)」というものがあって、そのせいで耐えられる力を越えて割れてしまったそうです。
形や材料を変えると揺れやすさ(資料で言う固有値)が変わるので、それで固有値をずらして対処するそう。
共振はこんな風に自分の揺れが無くても他の揺れを拾ってきてしまうので、自分も揺れてると掛け合わせで大きな力を受けることがあります。
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細かな説明です。
先ほど共振は解決の見込みが示されましたが、新しい問題が二つ出てきています。
(1)タービンディスク部にフラッタが発生
(2)翼振動計測試験で「対応すべき振動応答」を確認
(1),(2)それぞれ詳しくは書かれていませんが、振動によって破損する可能性があるということだと思います。
また、「対応策を具体化中」ということは具体的な対応策は未決定ということ。
設計を大きく変えずに対応可能かどうかで、大きく今後の設計に影響を与えそうです。
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今回の問題の原因解明のためにタービンの翼の振動を測れるようにした凄い装置らしい。
ターボポンプの回転数を変化させて、どのような振動が起きるか確認して、対策しているそう。
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共振の原因の説明です。
左側の3つの原因によって「共振」や「フラッタ」が生じているそう。
右の三つの対応策を取ろうとしています。
①振動の原因となっている箇所を改良し、生じる振動を減らす
②固有値を調整し、他からの振動の影響を受けにくくする
③振動を減衰させ、振動が大きくなるのを防ぐ
確認していく中で新たな問題も見つかって、それぞれに三つの対策をどう適用するかを考えているのだと思います。
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これまでの問題の発覚や、その対策の設計や試験のスケジュールです。見たままです。笑
設計と製造それぞれに時間がかかるので、スケジュール的に止む無く平行でやってたそう。
大丈夫か……?
この後またやり直すとなると、少なくとも後3ヶ月は厳しそうですよね。
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という訳で、まだ問題が解決していないため、2022/3までの打ち上げ予定を延期するそうです。
他の部分の試験等は先に実施しながら、エンジンの設計を進めていくとのこと。
問題①については「対応策を確立した」とのことなので問題はなさそう。(3Dプリンタ製に変更できるかは微妙だけど)
問題②は、「一定の目途を得た」と書きつつも現実は先ほどの「対応策を具体化中」なのでかなり厳しそう。
この後に「翌振動試験」「技術データ取得試験」「認定試験」という試験が色々待っているのを考えると、ざっくり半年では済まないように思います。
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補足です。全体的に結構進んでいることをアピールしています。
最後の大きな課題さえクリアできれば……ということでしょうか。
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補足です。極低温試験についてはほぼ問題なく終わったようです。
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参考資料です。
H-IIA、H-IIBから少し大きくなっています。
衛星メーカの要望は「安く」「早く」「大量に」「確実に」「遠くまで」飛ばしてほしいというものなので、沢山積めればそれだけ有利です。
このロケットが世界と戦えるのかは、また別のお話。
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参考です。僕も詳しくないのでよく分かりません。
参考です。違いが分かりません(ちょっとわかる)。
質疑応答は大貫剛さんが文字起こししてくださっているので、Twitterを引用させていただきます。
質疑応答
時事通信神田:OTPは入口の酸素の不均一と原因特定できていると思うが、FTPのフラッターの原因は特定できているのか
岡田:OTPもタービン入口なので、水素ガス。フラッターは、現象としてははっきりしている。見当がついていないのではなく、どう対応するかを検討している状況。— 大貫剛 (@ohnuki_tsuyoshi) January 21, 2022
全体を通して、エンジンというコアの部分なので確実に進めたいとの印象を受けました。
スケジュールに追われてかなり無理していたようにも見えますので、一度仕切りなおしたのは良かったと思います。
かなり言葉を選んでいますが、まだ具体的には対策が決まっていないのでまずはそこ次第です。
H3ロケットで打ち上げ予定の衛星も既にいくつかありますので、無事問題が解決してほしいと一宇宙好きとして思います。
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